『ひきこもりの入り口が「偶然」ならば、出口も「偶然」⁉』海外在住ひきこもり女子手記


28c9be9b7c1269a6dc5a86db110b6b85_s

(文・にゃあ黒の助)

脱出チャンスは誰にでも

やれクリスマスパーティだ、忘年会だ、新年会だと浮かれ気分の世間を横目に、ひとり部屋にこもるこの季節。それでも今年は少々気が楽だ、というのも休職中だから。

カジュアルなクリスマスランチから、タキシードやドレスを身にまとった教授達が集まる(筆者は大学勤め)フォーマルなディナー、ほか大小仕事関係の集まりにプライベートの集まり… 。

社交、人づきあい、人との繋がりなどが前面に押し出されるこの時期に居心地の悪さを感じ始めたのはもう随分前のことだ。10年ほどかけてひきこもり予備軍、二軍と順調に駒を進め、ここ数年はひきこもり一軍として大活躍中の私である(笑)。

顔見知りであろうとなかろうと、とにかく人に会うのがやたら怖くなった。会話する時のあの気まずい感じ、相手の言葉だけでなく表情や仕草から様々な情報を読み取ってしまう神経過敏な自分が嫌だった。

しかも、自分に自信がない分、下手をすると卑屈になるか、逆に防衛反応で少々口調が強くなってしまう… 。そんな自分を自覚しているだけに、「普通の楽しいおしゃべり」を演出しようと必死になり、結果、相手との間に気まずさだけが残る…。

あーあ、今思い出しても心と体が緊張する。

海外在住でひきこもりへ

20年ほど、海外に住んでいる。
異文化に住むということは、旅行 することとは根本的に違う。お客様である限りは甘えも許されるが、現地人と同じ土俵にたったら、つまり同じ生活者となったら話は別、シビアな現実が待っている。

数々の小さな凹凸を乗り越えたり迂回したりはあったものの、特に大きな異文化適応障害に悩まされることなく日々暮らしてきた自分が、人生半ばにしてひきこもるとは考えてもみなかった。

特に優秀でもなくごくごく平凡な私は、大志を抱いてこの地に移り住んだのではない。

早い話、流れ流れて気がついたら日本から遠く離れたこの地で暮らしていましたとさ、という感じなのだが、出たとこ勝負の割には異国での暮らしに案外上手く馴染んだ。

基本は内向的だが、外向的に振舞うこともできたし、好奇心も旺盛で、果敢に人生に挑んていた若かりし頃の私は、一体どこへ行ってしまったのか。

あの頃の自分の延長線上に今の自分がいるとは、どうしても思えない。傷ついた動物が森の奥へ避難するようにただ守りに徹している今の自分が。

だから、創刊号の斎藤環先生のインタビューに深く納得した。ひきこもりになるかならないかの違いは「偶然」という一節である。

絡み合った入り口

私の場合もいくつもの「偶然」が重なっている。三度の流産、旦那のDV、別居、母親との疎遠さ、仕事のストレス、職場の人間関係、マイノリティ(少数派)としての存在、親友を失くしたこと、職場でのパワハラなどなど。これら全てが絡み合って現在の状況が生まれている。

「偶然」が導いた結果なら、あの時職場に一人でも本音を吐き出せる相手がいたらあそこまで追い詰められずにすんだのか。旦那の、あの時の一言がなければ、大事に至らなかったのか。… そうかもしれない。そうじゃなかったのかもしれない。

ハッキリしているのは、あの時ああだったら、こうだったらと考えても何も変わらないということ。同様に、あの時こうしていれば、ああしていれば、と自分を責め続けるのは百害あって一利なし。散々自分を責め続けた私が言うのだから間違いない(笑)。自分に向き合うことと自分を責めることは全く違う。

人生を織物に例えたら、数十年という長期にわたって苦しめられているのが縦糸 ー例えば、絶望的と言ってもよい母親や旦那との関係、低い自尊心や歪んだ認知といった私自身の問題。縦糸に絡む横糸は、その時々のショックな出来事や落ち込むきっかけ — 例えば、自分の話す英語をバカにされた、話を無視された、良かれと思ってやったことを 丸ごと否定された、等々。
縦糸と横糸が重なり合って、私の心模様が浮かび上がる。

現実に打ちのめされて少しの間はうずくまっていてもいいかもしれない、というか、ひきこもってしまうほど心が萎縮してしまったら、そんなすぐには顔をあげられない。私もそうだった。ノックアウトされたその場所にうずくまったまま何もできずに、幾つもの季節が通り過ぎるのをただただ眺めていた。

出口は偶然

自分がなぜ生きているのか、生かされているのか、わからない。光の見えない闇の中を手探りでそろそろと進んでいた。そんな時に見かけたのが、斎藤先生の記事だった。

「偶然」がひきこもりの入り口ならば、出口も「偶然」なのではないか。ということは、過去の傷や現在の状況にかかわらず、誰にでもひきこもりから抜け出すチャンスはあるのではないか。反射的にそんなふうに思ったのであるが、さて、ポジティブな「偶然」を重ねていくために自分は 何をするべきかー。To be continued.٩(^‿^)۶

更新情報が届き便利ですので、ぜひフォローしてみて下さい!
Twitter
Facebookページ

この記事は1月号「女性のひきこもり」に掲載しております。
ご購入はこちらをクリック