「ひきこもり新聞を続けてわかったことは”求めている支援とのズレ”」木村ナオヒロ編集長の発言 引き出し業者被害 記者会見【全文】


2017年5月22日 開催 記者会見「ひきこもり自立支援を謳う団体による被害実態について」(全記事リンク)

「娘の心を深く傷つけてしまった」ひきこもり引き出し業者の被害者たちが告発会見(記者会見概要)

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「どう償ったら良いのか…懺悔の日々が続いております」被害者Aさんの父の発言 引き出し業者被害記者会見【全文】

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「ひきこもり新聞を続けてわかったことは”求めている支援とのズレ”」木村ナオヒロ編集長の発言 引き出し業者被害 記者会見【全文】

「不安に煽られた家族が、詐欺的な手口に」ジャーナリスト池上正樹氏の発言 引き出し業者被害 記者会見【全文】

 

司会:木村さんがひきこもり新聞を立ち上げた経緯も、暴力的支援に大きく関わっていますので、皆さんのお話を聴いてどう感じておられるのか伝えていただけますでしょうか。

木村ナオヒロ(「ひきこもり新聞」編集長):僕もひきこもり経験者ですが、まず伝えたいことは当事者が勇気を持って声をあげる事が大切ではないかという事です。
今回は被害者Aさんが勇気を持って、暴力的介入団体を提訴しましたが、これは、社会がこうした暴力的なビジネス団体を利用しなくなる大きな一歩だと考えます。

壊れた家族関係は修復が難しくなる

僕自身は引き出しの被害を受けていませんが、両親が業者に相談していて、もう少しで被害者の方と同じ経験をする状況にありました。ただ、警察がひきこもっていた自宅に上がって来たことがあります。
引き出されたわけでは無いのですが、その時は犯罪者扱いをされたと感じました。これを機会に家族関係はいっそう悪化しました。
Aさんが言われた通り、僕の体験からも、(他人が介入することによって)壊れた家族関係は修復することが難しくなるという実感があります。

求めている支援との間にズレがある

その後、TVタックルの放送がありました。この時流れた映像と、僕がひきこもっていた時の経験は似ていたので、当事者の気持ちが手に取るように分かりました。
特に問題だと思ったのは、放送がひきこもりへの偏見や誤解を広げたことと、当事者が最もしてほしくない訪問の仕方をされたという点です。
また、当事者の顔がさらされ、映像がTVやYoutubeに残り、たくさんの人に見られる状況に置かれたことは、大きな人権侵害だったと思います。
「ひきこもり新聞」を立ち上げた時には、自分の顔がネットにさらされ、とても苦痛に感じているというメールをいただいたことがありました。TV番組がひきこもり当事者の映像を躊躇なく流してきたことは、本当に問題だと思います。
僕はひきこもり新聞というメディアを立ち上げて、ひきこもり当事者の人権を無視するような放送はしないで欲しいと伝えようとしました。当事者発信は最初はマスコミへの抗議だったのです。しかし、続けてみて感じたことは、当事者自身が求める支援と、支援団体が行っている物にはズレがあるということです。当事者の意見を聴いていくと、上からの一方的な支援は、当事者に寄り沿っていないという声が多く集まりました。

どのような支援が必要か伝えていく

現在は当事者自身が、ピアサポートの学習会やひきこもり女子会など、高額なビジネス団体とは一線を画した活動を始めています。こうした当事者活動への応援や社会的支援が、もっと大きくなってほしいと思います。また、きちんとした専門家と繋がれる環境が広がってほしいです。そのためには当事者自身が声を上げて、どういった支援が欲しいかを伝えていかなければならないと思います。