(文・ウェンズ)
就職してから1年でひきこもり寸前に逆戻り
5年間通った大学を卒業してから、やっとの思いで就職した。
無為に過ごした2年間のあとに、唯一ぼくの手元に残っていた「新卒」というカードを使って藁をもすがる思いでひきこもり状態から脱出した。
でも、働き始めて1年経っても、生きることのツラさは正直あまり変わらなかった。
まず何よりも、毎朝起きて会社に行くのがしんどかった。
会社のデスクにつけば、ひとまず仕事に集中できるが、会社を出るのは早くても21時頃。会社にいる間はある種のハイな状態で、無心になって働ける。でも一旦会社の外に出ると、疲れがどっと押し寄せる。早く家に帰って寝たい。それしかなくなる。家に着くとシャワーも浴びずにベッドに飛び込んで眠る。
朝起きると、歯を磨かなかったせいで、ばい菌が繁殖している口の中が気持ち悪くて、お腹が痛くなる。全然休めていない。地を這うようにしてまた会社に向かう。そんな生活だった。
一応会社には行っているし、安いけれど給料ももらっている。けれども、精神状態はひきこもりの頃と何も変わっていなかった。仲のいい友達も、心を許せる彼女もいない。やらなきゃいけないことがあるかないかだけの違いだった。
会社に入ってから気づいたことは、いくら頑張ってもダメなものはダメだということだ。
仕事というのは、ある種の才能が必要だ。ぼくはクライアントには好かれなかったし、上司からも怒られてばかりだった。仕事をこなしてはいたが、結果を残すことはできていなかった。ぼくには仕事をうまくこなす才能がないなと気が付いた。
それに気がついてしまった後は、仕事を頑張ろうとしても身体が付いてこなくなってしまった。朝会社に行こうとしても、身体が動かなくなってしまい、遅刻することが多くなった。
好転のきっかけはアイドルライブ
なんとか持ち直したのは、心から楽しめる趣味を見つけられてからだった。
ぼくの場合は、アイドルだった。
ラジオでたまたま聞いた「仮契約のシンデレラ」という歌が頭から離れなくなり、私立恵比寿中学というアイドルにハマった。紅白に出たばかりのももいろクローバーZの妹分という触れ込みで、当時はまだまだ売り出し中だった。
初めて行ったライブは、2013年1月14日のZepp Tokyo。東京では珍しい大雪の日だった。
電車が止まったせいで会場に来られないお客さんがたくさんいたようで、会場はガラガラだった。
日曜日の夜に、電車も止まって家に帰れるかわからない状況の中だったせいか、会場には妙な一体感があった。
一人で行くことは不安だったが、周りにも一人で来ているお客さんが多く、とても盛り上がった。
その後は、仕事中もライブイベントのことしか頭になくなった。
ぼくは他のアイドルも見に行くようになり、ももクロ、lyrical school、PASSPO☆、アップアップガールズ(仮)、BiS、ひめキュンフルーツ缶、BELLRING少女ハートとメジャーからインディー(地下とも呼ばれる)までいろいろなアイドルのイベントに行くようになった。
AKB48から始まったアイドルブームのおかげで、東京では毎日どこかでライブが行われていた。
ライブハウスで行われるイベントだけでなく、「無銭イベント」と呼ばれる、CDのプロモーションのために行われる無料ライブも各所で行われており、身体がいくつあっても回り切れないくらいだった。
仕事中も次のライブイベントのことしか頭になかった。週末は毎日2~3つのライブイベントに行っていた。平日も会社を早く抜け出してイベントに行くことだけを考えていた。会社を中抜けしてライブを見てから、仕事に戻ったこともある。
一緒にライブに行く友達もできた。年齢もバックグラウンドもバラバラだけど、好きなものを一緒に楽しめる友達だ。その中に高円寺でバーを経営しているおじさんがいて、ライブに一緒に行った後には、バーを貸し切りにして、皆でライブ映像を見ながら朝まで盛り上がった。
こんな生活を続けていたら、だいぶ精神状態がよくなってきた。仕事の方は相変わらずだが、なんとか続けることができている。
自分が楽しむことを認めてあげる大切さ
ひきこもりだった頃のぼくが、今のぼくを見たら「ああ。ろくに仕事もせずに遊んでいるダメな大人だな」と思うに違いない。
でも今は、完璧でかっこいい自分でいられないことに悩んで苦しむくらいなら、
「そこそこの自分」を認めて、楽しいと思えることを大切にした方がよいと思っている。
もしこれを読んでくれた人で、今楽しいと思えることが何もない人がいたら、
ぜひ自分が楽しむことを認めてみてあげてほしい。
そこからしか前向きな気持ちは生まれないと思うから。
投稿者: ウェンズ(Twitter)