40代当事者の悲痛な叫び 「ひきこもり実態調査」


naikakufu

 

全国に推定約54万人のひきこもり群

内閣府は9月7日、15歳~39歳を対象とした「ひきこもり」実態調査の結果を公表した。

同調査は、6年前に内閣府としては初の試みで今回が2回目。前回と比較してひきこもり群が約15万人減少したと内閣府は発表した。

会場内では「40歳以上のひきこもりが調査対象として含まれないのはおかしいのではないか」という指摘も上がった。今回は同調査を受けて、40代引きこもり当事者の声を聞いた。

約15万人減少?

今回発表された「ひきこもり」実態調査が記されている『若者の生活に関する調査書』(内閣府政策統括官)によると、全国で「ひきこもり群の出現率は1.57%、推定約54万人。前回調査した2010年の推定69万人(出現率は1.79%)に比べて約15万人減少したという。調査は、国内の約5000世帯(本人3,115人、家族2,897人)に向けて行われた。

前回の調査でひきこもり群となされていた30歳~34歳(18.6%)、35歳~39歳(5.1%)合計およそ23.7%のひきこもり群が仮に6年経った現在も引きこもっていた場合、カウントされていないことになる。

また、今後の展開として長期化しているひきこもりへの支援を強化するとして、アウトリーチ研修(担当者が当事者の自宅に赴き、様々な会話を試みながら当事者が外へ出られるようにする手法)などを39歳以下のみに対象として行っていく予定だという。

質疑応答で「長期化が深刻化している40歳以上の引きこもり群のために動く必要はないのか」という声に対して、内閣府政策統括官の石田徹参事官(共生社会政策担当)は『「若者の範囲が40歳を過ぎているので」「内閣府の環軸外」「40歳以上は厚労省にお任せしている」』などといった返答で、40歳以上の引きこもりに対するケアおよび調査は望めないようだった。

 

「存在が消された」40代女性当事者の悲痛な叫び

計20年以上に渡ってひきこもり当事者として生きてきた40代女性Tさんは「今回の調査は正直言って心底がっかりしました。私たち40代以降の引きこもりの存在が消されているようなものだと感じます。

時に私たちは『棄民』として揶揄されますが、そのような感覚を覚えました。40代以降の引きこもりが増加すれば、生活保護者や医療費増大に繋がるであろうことは容易に予測できますし、結果的に困るのは国なのに何故向き合おうとしないのかがさっぱりわかりません。今後への不安が募るばかりです」と肩を落としながら語った。

そのほか、元ひきこもりやひきこもり当事者たちからも数多くの辛辣な声が聞こえてきた。

「15万人の引きこもり群が減少されたと公表しているものの、単なる人口減少や前回調査で6年~7年経った人たちがはじき出されただけではないのか」、「就活中の人や家事・手伝いしている人が除かれているのはおかしいのでは」、「そもそも何のための調査なのかわからない」「引きこもり群の『7年以上経過している人』の追跡調査がない、これでは長期化している人への支援を強化していくということと矛盾しているのではないか」などだ。

事業費用に2000万円ほど使われたという同調査。人数的には改善があったとみられるが、事態は深刻化している一方なのではないかと筆者は受け取らざるを得なかった。

(文・土橋)