コミュニティカフェを活用した中間就労のしくみについて
文・yanai
埼玉県にある鳩山コミュニティスペースのシェアオフィスの一室を借り、2017 年 12 月 5 日に協働連絡会(任意
団体)を設立しました。「協働を通して地域の課題を解決したい」という想いを社会的企業という形で実現するためです。多くの困難があると思いますが一つ一つクリアしていければと考えています。
以前、ひきこもり新聞では、ドリームマップ説明会の記事で取り上げて頂きました。ドリームマップとは、一般社団法
人ドリームマップ普及協会が提案する目標達成ツールで、将来なりたい自分の姿をイメージし、台紙の上に写真や文字
で表し夢を見える形にするものです。
この企画は、一般社団法人ドリームマップ普及協会理事の佐藤恵子さんの協力のもと実現しました。ドリームマップを
活用して、自分自身の生き方、在り方と向き合い、それを見える形にする事で、人とのつながりのきっかけになればと
考えたからです。
これまでの活動
私は、大学院でコンピュータを学んだ後、システム開発や運用の仕事に従事する一方で、不登校や高校中退者向けに高
卒認定試験などの学習支援を約8年間続けてきました。現在は、ひきこもり状態など一般就労が難しい人のために、居
場所から働く場へと繋げる段階的な仕組み作りに取り組んでいます。
この取り組みのスタートは、2016 年8月に開催されたひきこもりフューチャーセッション庵で自分のビジョンを会場の
参加者の前でひと言だけお伝えする機会を頂いた所から始まりました。その後、庵ではテーブルオーナーを3回ほど務
めさせて頂きました。
2017 年 10 月には、KHJ 全国ひきこもり家族会連合会が主催する KHJ 全国大会の二日目(明治大学会場)、居場所と中
間就労カテゴリで居場所とはたらく場のあいだというテーマで講演する機会を頂きました。
一方、地元の埼玉では、NPO 法人チーム東松山が企画するこどもの楽校で、小学生向けにプログラミング講座やロボッ
トプログラミング講座を開講したり、同法人の協力を得て週1回フリースペースを運営しています。
フリースペースは、少人数ですが小学生達がビジュアルプログラミングソフトのスクラッチでプログラミングをしたり、
マインクラフトという3 D のゲームプログラミングを体験しています。
同時に、鳩山コミュニティスペースが企画するクリエイターズマルシェやナイトマルシェ、こどもマルシェなどの
イベントでワークショップ開講の依頼が来るようになりました。ワークショップの開講には、複数台のパソコンが必要
になるため断念しましたが、イベントでは、ゲームプログラミングの体験とロボットの展示を実施する事ができまし
た。町の広報動画(YouTube)や広報紙にも、ほんの少しだけ載る事ができ感謝しています。また、イベントに参加さ
れていた彩の国さいたま人づくり広域連合の方の紹介で、隣接する市の有志が進めている学童保育のプロジェクトに参
加する事で、様々な分野の人材とつながり始めています。ドリームマップで描いた夢(地域と共に歩む社会的企業)が
現実に向かって動きだしていると感じています。
前置きが長くなりましたが、このような流れの中で、次のステップとして、町が運営するシェアオフィスを借り、中間
就労の仕組みをより具体的にできないか構想を練っています。
コミュニティカフェを活用した中間就労とは?
基本的な考え方は、地域の居場所として存在するコミュニティカフェで、ワークショップを開講し、その収益を分配
する仕組みを作るものです。コミュニティカフェを活用する事で、テナント料などの固定費をなくし、ワークショップ
を開講した時間分の経費のみを支払います。これによって、リスクを最小限に抑え、かつコストカットされた場所代等
を当事者への還元率をあげるような中間就労になる形を考えています。中間就労の内容としては、例えば、講師のアシ
スタントやコンピュータのセッティング、清掃やワークショップのチラシ制作、ホームページの管理などが考えられま
すが、これらは当事者が主体的となって役割分担を考えていくのも良いと考えています。
子供向けのワークショップの開講
2020 年に、小学校でプログラミングが必修化される動きがあるので、子供たちに人気のあるビジュアルプログラミン
グソフト スクラッチを使ったプログラミング講座やロボットプログラミング講座、あるいはドリームマップ講座を考え
ています。2月から試験的に生徒を募集する予定です。将来的には、楽しく学べるをキーワードに、当事者の得意な事
を様々なワークショップに結び付けられればと考えています。また、こども向けのワークショップを通して、地域のに
ぎわいと地域で孤立しがちな人の居場所や必要に応じて中間就労につながる仕組みを作りたいと考えています。
自分のペースで参加できるしごと場
就労というと、1日8時間・週5日間働くというイメージが強いと思いますが、まずは、はたらく日や時間帯をカス
タマイズできると良いと思います。地域の企業で理解がある所と提携し、在宅勤務や複数人(仲間)で仕事を一緒にで
きる仕組みがあると良いなど、いろいろな意見もあると思います。コミュニティカフェを活用して仕事(地域の中での
自分の役割)を、小さく作っていく事で、自分のペースで参加できるしごと場を作っていく事ができると信じています。
みんなの小さなできる事、過去の経験や属性を組合わせ、 「仕事の種」を見つけ、その価値を喜んでくれる人と結びつ
ける事で、仕事を生みだす事も可能だと思います。お店が人を使うのではなく、人がお店をつくっていけるような場に
なればと思います。
居場所とはたらく場のあいだ
いきなり仕事を意識して動くのは、なかなか難しいものです。まずは、自分の生き方・在り方をていねいに見つめる
機会があると良いと考えています。ドリームマップを通してそれらをビジュアル化する事で、どんな仕事ならやってみ
たいか、どんな働き方をしたいか、就労後にはどんなサポートが必要か?などの答えも見えてくると思います。ドリー
ムマップは履歴書の志望動機や面接練習にも通じると考えています。なぜならドリームマップを描く事は自分の夢・目
標を人に見える形にする作業だからです。
一人で働き続ける事は難しくても、同じ境遇の人たちとの共感の中で励ましあいながらならば、居場所を通して、みん
なで少しずつ動く事ができるかもしれません。
中間就労のヒントは藤里町社会福祉協議会(秋田県)
秋田県の藤里町社会福祉協議会が実施している、いわゆる藤里方式というものがあります。藤里方式とは、地域活性
化の課題をひきこもり当事者が担う事で二つの課題を組み合わせ同時的に解決をはかる方式であり、NHK のクローズ
アップ現代でも取り上げられました。就労支援施設こみっとを開設し、接客や買い物支援などの中間就労の機会を提供
しています。この中間就労支援のモデルに IT とコミュニティカフェを組み合わせる事を考えています。
地域活性化と中間就労
日本は今、少子高齢化の影響で地域は衰退する傾向にあります。だからこそ、当事者の得意を地域の資源と考え、地
域の中で仕事と結び付ける事で地域活性化と中間就労などに結び付けたいと考えています。仕組みを他の自治体に広げ、
コミュニティカフェのネットワークを構築し、行政や NPO をはじめ、大学やメディアとの関係性の中で、困難に陥って
も人とのつながりの中で生きていける社会が求められていると考えています。
支援の出口がワーキングプアにならないために
現状の日本社会の労働者の雇用を取り巻く環境は非常に厳しいです。多くの労働者が不安定な非正規雇用に従事せざ
るを得ない環境になっています。コミュニティカフェをベースとする事で就労支援に偏らず、必要に応じて社会保障に
結び付く仕組みも今後求められると考えられます。行政・企業・NPO との協働でこのような仕組みを作っていく必要が
あると考えています。
当事者活動がしごとにつながる日
いま全国で当事者を中心とする居場所が誕生していますが、居場所に来る事によって、これまで出来なかった事や
チャレンジできなかった事も、同じ境遇を経験した人同士ならできる可能性があると思います。
ひきこもり大学やひきこもり新聞も当事者経験があってこそ生まれたアイデアであり、認知されるようになっています。
自分の経験が他の誰かのためにもなる事は、仕事(地域や社会の中での役割)につながる価値を持っているのだと思い
ます。働き方改革で、これまでのような終身雇用からフレキシブルに働ける時代が来ようとしています。インターネッ
トの活用によってスキルがあれば在宅でも働けるようになりつつあります。
当事者活動の広がりと結びつきによって、当事者性を活かすことができる社会が来ることを願っています。
おわりに
まだまだ構想段階ですが、みなさんの協力を得ながら少しずつ形にしていければと思います。このような執筆の機会を
くださったひきこもり新聞に感謝いたします。ありがとうございました。