(文・ヨナタン・リビングストン)
※このレポートはあくまでヨナタン・リビングストンの作風であり、ジョークやフィクションを織り交ぜておりますのでご了承下さい。
……Who’sWho
私はヨナタン・リヴィングストン(偽名)といい、近頃のひきこもり界で、影のエージェントとして活動している。
そんな私の日々の諜報活動の一環として、訪れたひきこもり関連の居場所やイベントの内情を、読者諸氏にご報告するのが本シリーズのミッションだ。
今回は第一回目ということで、われわれ、ひきこもり新聞編集部自身をターゲットにした。
これは、われわれがいかなる存在であるのか、読者のみなさんにお伝えするという意味も兼ねている。
……ある正体不明の集団
新聞発刊に先駆けた本年9月~10月初旬、都内某所にて、数度に渡り、秘密の会合が開かれた。
かねてより各地に潜伏していた同志たちが参集し、その数は首領であるK以下、10名余(回によってバラつきあり)。
編集部員や記者候補、情報提供者のほか、われわれの存在をいちはやくキャッチしたと思しきマスコミ関係者の姿も確認された。
メンバーの顔ぶれを見ると、役人風の若者、なぜかマッチョ体型の男、芸術家風のファッションの殿方や、語尾と服装が微妙にギャル系の女性までわりと多彩で、通常のひきこもり系の集まりではあまり見かけない種族が多い、との印象だ。
加えて、マイノリティ系のグループに特有の空気感も希薄であったので、傍から見るといったい何の集団なのか不明と見えたかもしれない。私がこれまで観測した範囲ではあるが、ひきこもり系の人たちの平均値からかなり隔たった人々ではあるのだが、どの世界でも、この種の活動を担うのは、全体の傾向からやや外れた比較少数の異端分子、との定則からすれば、ひきこもり界とて例外ではない、というだけなのだろう。
各自の背景も様々で、もし、「ひきこもる」という共通の経験がなければ、互いに出会うこともなかった人々であるとは、容易に推測できる。ひきこもりというと、一般には他者と関係を断ち、ひたすら自身の中へ孤立してゆく縮退現象、とみなされているが、ここでは逆に、そうした経験が、人と人とを結ぶ共通の絆として働いているのが面白い。
続く≫
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