(文・さえきたいち)
ひきこもり経験を経た者だから感じる、ピアサポートとは?
プロ野球、北海道日本ハムファイターズの日本一の熱気も冷めやらぬ10月31日、ひきこもり界も北海道が熱く燃えました。
札幌市のレター・ポスト・フレンド相談ネットワーク主催の 「それぞれの経験的知識がつなぐひきこもりピアサポート」が 北翔大学北方圏学術情報センターポルトで行われ 46名(うち当事者19名、講師除く)の来場者で熱気に包まれました。
トップバッターは、香川の宮武将大氏(一般社団法人hito.toco 代表理事)から。 彼の話を聞くと「ひきこもり新世代」を感じる。
「ひきこもり、足りない」。「ひきこもり香川県移住計画」など従来のひきこもりイベントでは聞かれない斬新な言葉が並ぶ。 近年の傾向かも知れないが、宮武氏のように家族の理解を得られて ひきこもった自分をらしさとして担保出来る当事者が増えているのを感じました。
2人目は、神奈川県の割田大悟氏(ひきこもり当事者グループ「ひき桜」in横浜 代表)。
彼ほど実直という言葉が似合う人はいないと思います。 ピアサポってなんだろう?という根本の疑問から入って 「横の関係」で相手と接することで「相互的な」関係を築き 相手と一緒に、ピアサポ自身もリカバリーをする。
今までの支援関係にない、ピアサポだからこその関係性。 「ピアサポは、既存の支援者になるな」 という力強い言葉に、彼の積み上げてきた理論と実践の重みを感じました。
3人目は、大阪の泉翔氏(NPO法人ウィークタイ 代表理事)。 彼の言葉からは、いつも以上に「思い」を感じました。
筆者も大阪に住んでいるので思い入れもあるのだが、 大阪は、ひきこもり状態に苦しむ人には非情にシビアな街である。 「ひきこもりは、生きるための手札だった」。
彼の立ち上げたウィークタイの理念を見たときに、 その言葉の重みを理解しました。
それぞれに感じる”生き様”
4人目は、札幌の吉川修司氏(NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク 理事)。 レター・ポスト・フレンド相談ネットワークの理事として 会報や手紙を送るアウトリーチ活動を地道に行うのですが、そこには「艱難辛苦」があったそうです。
そんななかで 「当事者同士だからこそ」支え合える関係があったと語っていました。 話のなかでも苦しんだ経験を笑いに変える、 半世紀近い人生を歩んだからこその、年の功というものを感じました。
5人目は、東京の坂本凌雲氏(ひきこもりプレイス多摩 代表)。以前から私達にも「ひきこもり歴が短いために、うちの子とは違うと言われ悔しい思いをする」と語っていた彼の体験した 「真綿で首を絞められる感覚」。 就職するより辞めない事の大変さ。
どちら側にも理解されない苦しみがある代わりに どちら側の立場も理解できて、話ができる。 そして元当事者、経験者だからこそ語れることがある。 これが家庭を持ちながらピアサポ活動を続ける 彼のモチベーションになってるのだと感じました。
最後の発表は、帯広の酒井一浩氏(リカバリースポット 代表)。 リカバリースポットという名称について 「3年来なくてまた来てもいい」「1点に過ぎなくても良い」 これには私も非常に共感した。
自身の経験したアメリカでのピアサポートの話になり、 「彼らは(精神科医などの)専門職の人と対等にやっている」。
また、イギリスでは訪問型の家庭支援を行っており 「当事者、家族、支援者のトライアングルを意識すると上手く行く」。 実践に裏打ちされた理論で、とても興味深い話でした。
6名のピアサポーターの方々は、出身、年齢、ひきこもり経験、背景、 それぞれに違うものがあるなかで 話の節々に私が感じたのが、その生きざまでした。
今回の企画を立て、全国から6名の素晴らしい講師を呼んでくれた レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク事務局長の 田中敦氏の熱意、お人柄があって 今回のイベントが実現出来たのとだと感じました。
さえきたいち
物心ついた時から強い対人不安に苦しむ。大学を中退し、22歳から父の勧めもありフリースペースに通うようになる。現在は39歳無職。自称ひきこもり外交官としてひきこもり関係のイベントを行脚中。
失礼します。大阪方面に住むひきこもりものです。文面で気になったのですが、
>>大阪は、ひきこもり状態に苦しむ人には非情にシビアな街である。
これはどういった事でしょうか??
返信よろしくお願いします。
大阪は就労支援などの社会に合わせる事を求める支援が多いので、精神的負担を強いられることが多く、すぐに就職活動が出来る人なら良いが、それが難しい人は傷つけられやすいので、居場所選びは慎重に行う必要がある。ですが大阪は人口も多いので良い支援を行う団体もあり、人を探せば良い支援も中にはあるというのが私の印象です。
さえきたいち