ひきこもり支援の現状とこれから
(文・土橋詩歩)
11月15日、町田市保健所・生涯学習センターが共催する「生きづらさの中でひきこもる心を理解する講座(全6回)」の第3回目となる「外に出ることをゴールにしていませんか?」が開催された。
講師を務めたのは、ひきこもりを20年近く取材し続けているジャーナリスト池上正樹氏と、自らがひきこもり経験者でもあり、『ひきこもり当事者グループ「ひき桜」in横浜』代表の割田大悟氏。
参加者の約8割は当事者家族。今回は講師2名による対談と当事者家族の話を伺った。
講師2名によるトークセッションでは、主に3つのテーマが話された。
まず初めに、未だにひきこもり=悪というイメージが払拭されていないこと、ひきこもり支援が就労支援に直結しがちである現状を受け、割田氏は「外に出るのが本当にひきこもりの解決につながるのかどうか、今一度議論されるべき。今後は一方的に支援を受けるのではなく、(支援される側の)横のつながりを作っていく必要がある。加えて、家族との関係修復も非常に重要。ひきこもり=悪とされているムードが未だにあることが大変悔しい』と語った。
次に、都内および都内近辺での活動が紹介された。ひきこもり当事者が対等な関係を築き上げ、双方が元気になっていくことを目的とした『ピアサポート』・ひきこもり当事者や関心のある人が100名前後集うグループトークの場『ひきこもりフューチャーセッション庵 IORI』や、『ひき桜』・『女子会』・『ひきこもり新聞』、などについても触れられた。
また、今後は地域で必要とされることとして「居場所づくり」があげられた。
割田氏が「当事者会で知り合った方が様々なイベントを紹介してくれた。これが情報収集や外に出るきっかけとなった。ひきこもっていた時期は、『誰かと繋がりたい』という気持ちがあったけれど、安心できる情報・場所が近くに無く辛かった」と当時の心境を吐露し、池上氏は「孤立したい時期も人によっては様々ある。外に出てみてもいいかなというエネルギーが高まったとき、近くに『居場所』があるといい」と続けた。
一歩先を行く町田市の動き
東京都町田市保健所では、2012年度から同市5ヵ年計画の重点事業として「ひきこもり者支援体制推進事業」に取り組んできた。2013年には20歳から64歳までの市民を対象に、無作為抽出法でひきこもりの実態調査が実施された。その結果、20世帯に1世帯以上の家庭でひきこもり状態の人がいるということが明らかになった。
『高齢化するひきこもりへの対策を』
筆者は今回、参加者の年齢層(60代~70代が多数だった)から、地方だけではなく都内でもひきこもりの高齢化が確実に進んでいることをあらためて痛感した。「支援・調査・などを40歳などの年齢制限でブツ切りにしないでほしい」、「自分の老後や死後、現在ひきこもっている子供の経済状況や家事など基本的な生活ができるか心配」と嘆く高齢の参加者も少なくなかった。
そのほか「こうした講座があることはとてもありがたい。ある意味で『親の居場所』」となっている」という声もあがった。未だに数字としては明らかにはなっていないものの、こうして生の声をすくい上げていくと、高齢化したひきこもり状態の子とその家族が持つ悩みは増加している一方であることがわかる。その為にも、横のつながりを強化する「居場所」は今後ますます必要とされていくだろう。
同講座は、通常定員30名。11月29日に開催される「将来の生活を見据えるために」と題した、働けない子どものお金を考える会のファイナンシャルプランナーである畠中雅子氏が講師を務める講座は定員120名となっている。問い合わせ連絡先は町田市生涯学習センター042-728-0071まで。